2022年10月24日、国立大学法人東京大学、味の素ファインテクノ株式会社、三菱電機株式会社、スペクトロニクス株式会社の合同研究チームは、次世代の半導体製造工程に必要な、パッケージ基板への6μm以下という極微細レーザー穴あけ加工技術を開発した。

現在、CPUに代表される高度な半導体においては、パッケージ基板のビルドアップ材料としては味の素ビルドアップフィルム(ABF)が広く用いられており、ABFに対してレーザーを用いて多数の微細な穴あけ加工をして、銅めっきすることによって電気的な微細配線を行っている。現在用いられている穴径は40マイクロメートル程度であり、加工に用いるレーザーの波長が長いために、これ以上の微細穴あけは困難だった。しかし、EUVリソグラフィ技術の進展により、半導体の微細化や半導体構造のチップレット化など半導体を取り巻く環境が大きく変化する現在、ABFの微細穴あけに要求される穴径はより一層の微細化が求められている。

そこで今回、4法人は次世代半導体製造に貢献する10μm以下の穴径の微細な穴を、製造のニーズを満たす品質で、製造ラインの生産能力も視野に入れて実現することを目標に、銅薄膜上に厚さ5μmのABFを配置して、これにレーザー微細穴あけ加工を実施した。レーザーにはスペクトロニクスが開発・販売している波長266nmでピコ秒のパルス幅の深紫外レーザーを用い、レーザー加工機には三菱電機が深紫外短パルスレーザーを特別に組み込んだ次世代プロセス用開発機を用いた。東京大学がSIP事業で開発する、加工プロセスを最適化するCPS型レーザー加工機システムの成果も取り入れた結果、6マイクロメートル以下の極微細穴あけ加工を実現した。実現した微細穴は穴径が6マイクロメートル以下であるとともに、加工能力については、1秒当たり数千穴を実現している。また、高品位加工用のパラメータを用いることで、φ6μmにおいて、上面の穴径と下面の穴径の比として定義されるテーパー度は品質基準値の75%に達することがわかったという。

4法人では今回の成果が次世代の半導体製造におけるパッケージ基板に対する基本的な要求に応えていると見ており、今後の半導体のさらなる微細化や複雑化するチップレット技術を支え、消費電力の削減やポスト5G、電気自動車(EV)対応などへつながることが期待されている。

今回の研究開発はレーザー加工のスマート化を目指す産学官協創の拠点として東京大学が運用する「TACMIコンソーシアム」において、半導体製造に関する異なる強みを持つ法人が業種を超えて連携・開発したことによる成果だとしており、今後もTACMIコンソーシアムでは、今後も様々なモノづくりニーズに応えていくために、業種や分野を横断する産学協創活動を推進していくとしている。